〜悪質な高値誘導から大切な資産を守る方法〜

億単位の金が動く大規模修繕工事において、本来は住民の味方であるはずの「設計コンサルタント」が施工会社と結託して2割近く工事費をつり上げたり、果ては悪徳業者の社員が住人に「なりすまして」修繕委員会に潜り込み、高額な工事に誘導したりするという恐ろしい実態が報じられています。

前回のコラム(7/20日経朝刊『あえぐ管理組合(上)』)では、人件費高騰などを理由に、大手の管理会社が採算の合わない小規模マンションを一方的に契約解除(切り捨て)している実態についてお伝えしました。

しかし、マンション所有者が直面している試練はこれだけにとどまりません。

続く本日(7月21日)の朝刊1面には、さらに根が深く、所有者の資産を直接蝕む衝撃的な記事が掲載されています。

タイトルは『マンション不都合な真実 あえぐ管理組合(中)ドル箱の大規模修繕 「なりすまし住人」高値誘導』。

■ 「相場を知ることが重要」という言葉の裏にある現実

記事の締めくくりでは、「管理組合が相場の感覚を持つこと自体が不正の抑止力になる」という専門家のコメントが紹介されていました。

確かに、相場を知ることは抑止力として非常に重要です。しかし、不動産実務の現場を知る人間としてあえて申し上げますと、素人である管理組合が「適正な相場」を把握・判断するのは、ほぼ不可能と言っても過言ではありません。

なぜなら、マンションの修繕工事費用は、以下のような要素によって一物件ごとに全く異なるからです。

  • 建物の規模・階数・構造(RC造の仕様や形状など)
  • 敷地の立地状況(作業スペースや足場が組みやすいか、前面道路の幅員など)
  • 外壁タイルや共用部設備の仕様
  • 前回の修繕時期と、これまでのメンテナンス履歴

「同じ戸数だから」「隣のマンションが〇〇万円だったから」という比較が一切通用しないのが、マンション修繕の世界です。だからこそ、プロと称する悪徳コンサルや施工会社の「言い値」が通りやすく、カモにされてしまうという構造的な問題を抱えています。

■ なぜ取りまとめが難しいのか?
〜身近な「飲み会」で考えるマンション管理〜

さらにマンション管理を難しくしているのは、悪質業者の存在だけではありません。そもそも「住人同士で意見をまとめて合意形成を図る」ということ自体が、非常にパワーのいる作業だからです。

身近な例で考えてみてください。

「5〜10人の友人同士で飲み会を開催する」となったとき、すんなり決まらずに少し揉めたり疲れたりした経験はありませんか?

グループの中には、いろいろな人がいるはずです。

  • リーダーシップを取って仕切ってくれる人
  • 「どこでもいいよ」と全て他人任せな人
  • 黙々とお店の予約や調整を引き受けてくれる人
  • 決まった後に文句だけ言う人
  • 参加・不参加の返事がずっと曖昧な人

日程、場所、予算、お店選び……反対意見への対応や返答がない人の催促をしているうちに、「なんだか段取りするだけで疲れちゃったな……」と感じる方も多いのではないでしょうか(正直、私自身もこうした調整は少し苦手です笑)。

たかが数人の飲み会ですら嫌な顔をせず積極的に取り組むのは難しいのに、これが「数千万円〜数億円が動くマンションの管理組合」となればどうでしょうか。

マンション管理は、「誰しも積極的に仕切りたいわけではないけれど、大切な資産に関わるイベントだから参加せざるを得ない」という、飲み会以上に調整が難航しやすい構造を抱えているのです。

しかも、仮に不動産や建築の知識があるプロが集まったとしても、居住者の立場によって意見は180度分かれます。

  • 永住を見据え、「今コストがかかっても完璧に修繕して価値を維持すべき」とする予防保全の立場
  • 近い将来の売却を見据え、「毎月の資金負担を抑えるために最低限の修繕にとどめるべき」とするコスト優先の立場

知識の有無以前に、「価値観の違う人間同士でひとつの結論を出す難しさ」があるからこそ、管理組合の運営や大規模修繕は難航し、そのスキを悪質業者に狙われてしまうのです。

■ 今、マンション所有者に求められている真の対策とは?

専門知識のない住民が、悪質な業者のプロの手口を完全に見抜き、なおかつ住人同士の意見をまとめるのは容易ではありません。 だからこそ、今の段階で各マンションオーナー様に必要なのは、専門知識を無理に詰め込むことではなく、「維持管理に対する意識を改め、適切な知識と警戒心を持つこと」です。

  • 「すべてお任せ」で管理会社やコンサルに丸投げしていないか?
  • 修繕の議論が、特定の人物や極端な意見だけで進んでいないか?
  • 示された見積もりや計画に対して、客観的なセカンドオピニオンを求めたか?

「任せておけば安心」という時代は終わりました。所有者一人ひとりが「自分たちの資産を守る」という当事者意識を持つことこそが、最大の防衛策になります。

■ お気軽にご相談ください

「うちのマンションの修繕積立金や管理状態は、客観的に見て大丈夫だろうか?」 「提案されている修繕計画や見積もりに、不自然な点はないだろうか?」

少しでも気になる点やご不安がございましたら、ぜひ一度ご相談ください。

私は不動産売買のプロであると同時に、「管理業務主任者」および「宅建士」の国家資格を有する専門家として、建物の維持管理状態や資産価値への影響を客観的な視点からチェック・アドバイスさせていただきます。

大切な資産の価値を削ぎ落とされないよう、まずはお気軽にご意見をお聞かせください。